子どもの運動能力を伸ばすには?家庭でできる体づくりを解説

運動遊び

はじめに

「うちの子、運動が苦手かも」
「よく転ぶけど大丈夫かな」
「走る・跳ぶ・投げる動きがぎこちない気がする」

子育てをしていると、子どもの運動について気になる場面があります。

特に、幼児期から小学生にかけては、体の使い方が大きく変わる時期です。できることが増える一方で、子どもによって得意・不得意の差も見えやすくなります。

私は理学療法士として、体の使い方や姿勢、動作を見てきました。また、子育てをする父親としても、子どもに「運動させる」のではなく、どうすれば楽しく体を動かせるかを日々考えています。

この記事では、文献や参考資料の内容をもとに、子どもの運動能力を伸ばすために家庭でできる体づくりを、パパママ向けにわかりやすく解説します。

結論:運動能力を伸ばすには「練習」より「遊びの経験」が大切

子どもの運動能力を伸ばすために、最初から本格的なトレーニングをする必要はありません。

特に幼児期に大切なのは、特定のスポーツを早く始めることよりも、遊びの中でいろいろな動きを経験することです。

走る、跳ぶ、転がる、投げる、捕る、くぐる、登る、支える、押す、引く。

こうした基本的な動きは、スポーツだけでなく、日常生活の土台にもなります。

つまり、子どもの運動能力は「足が速いか」「遠くへ投げられるか」だけで見るものではありません。体をどう使っているかどんな動きの経験をしているかを見ることが大切です。

子どもの運動能力は「記録」だけでは判断できない

運動能力というと、つい次のような結果に目が向きます。

  • 何秒で走れたか
  • 何メートル跳べたか
  • どれくらい遠くへ投げられたか
  • 何回できたか

もちろん、記録も一つの目安になります。

しかし、幼児期から小学生の体づくりでは、記録だけでなく「動き方の質」を見ることも大切です。

たとえば、走る動きでは、

  • 腕を振れているか
  • 足だけでなく体全体を使えているか
  • 方向転換で体が大きく崩れないか

跳ぶ動きでは、

  • 両足で踏み切れているか
  • 着地でふらつきすぎないか
  • 膝や股関節を使えているか

投げる動きでは、

  • 腕だけで投げていないか
  • 足を一歩出せているか
  • 体をひねる動きがあるか

このような視点が大切です。

理学療法士として見ると、運動が苦手な子は「筋力がない」というより、体の使い方がまだ整理されていないことも多いです。

そのため、いきなり「もっと速く走って」「もっと遠くへ投げて」と言うより、遊びの中で自然に動き方を経験できるようにする方が取り組みやすくなります。

幼児期に大切な「多様な動き」

子どもの体づくりでは、いろいろな動きを経験することが大切です。

たとえば、次のような動きです。

1. 体のバランスをとる動き

  • 片足立ち
  • ケンケン
  • 線の上を歩く
  • しゃがむ
  • 立ち上がる
  • 転がる
  • ぶら下がる

バランスをとる力は、姿勢や転びにくさにも関係します。

「よく転ぶ」「座る姿勢が崩れやすい」という子は、バランスや体幹を使う遊びを増やしてみるとよいです。

2. 体を移動する動き

  • 走る
  • 歩く
  • 跳ぶ
  • 登る
  • くぐる
  • 這う
  • よける

移動する動きは、運動の基本です。

ただ走るだけでなく、鬼ごっこ、しっぽ取り、動物歩き、障害物またぎなどにすると、子どもは楽しく体を動かせます。

3. 物を操作する動き

  • 投げる
  • 捕る
  • 蹴る
  • 転がす
  • 運ぶ
  • 押す
  • 引く

特に「投げる」動きは、経験の差が出やすい動きです。

投げる力は腕力だけではありません。足の踏み出し、体のひねり、腕の振り、反対の手の使い方など、全身の連動が関係します。

ボール遊びが少ない子は、まず新聞紙ボールや柔らかいボールを使って、楽しく投げる経験を増やすことから始めるとよいです。

36の基本動作とは?幼児期に経験したい動きを解説についてはこちらの記事

家庭でできる運動遊び

特別な道具がなくても、家庭でできる運動遊びはたくさんあります。

新聞紙ボール的当て

新聞紙を丸めてボールを作り、段ボールや紙コップを的にして投げます。

育ちやすい動きは、

  • 投げる
  • 狙う
  • 体をひねる
  • 足を踏み出す

です。

柔らかいので室内でも取り入れやすく、投げることが苦手な子にもおすすめです。

ポイントは、最初から遠くに投げさせないことです。近い距離で「当たった!」という成功体験を作る方が、子どもは楽しく続けられます。

ロープジャンプ

縄やロープを床に置き、その上をジャンプします。

育ちやすい動きは、

  • 跳ぶ
  • 着地する
  • バランスをとる
  • タイミングを合わせる

です。

最初は両足ジャンプで十分です。慣れてきたら、片足ジャンプ、グーパー跳び、横向きジャンプなどに変えていきます。

ジャンプは骨や筋肉への刺激にもなりますが、やりすぎる必要はありません。痛みがある場合は中止してください。

クマ歩き・動物歩き

手と足を床につけて、クマのように歩きます。ほかにも、カエル、ワニ、ペンギンなど、動物まねにすると楽しくできます。

育ちやすい動きは、

  • 体を支える
  • 肩や腕を使う
  • 体幹を使う
  • 手足を協調させる

です。

体幹や肩まわりを使うため、姿勢が崩れやすい子、体を支えるのが苦手な子にも取り入れやすい遊びです。

しっぽ取り

タオルやハンカチをズボンの後ろにはさみ、親子で取り合います。

育ちやすい動きは、

  • 走る
  • 止まる
  • よける
  • 方向転換する
  • 相手を見る

です。

単なるかけっこよりも、反応や判断が入ります。走るのが苦手な子でも、遊びとして取り入れると自然に動きやすくなります。

片足立ちチャレンジ

片足で何秒立てるか、親子で遊びながら行います。

育ちやすい動きは、

  • バランス
  • 姿勢保持
  • 足裏の感覚
  • 体幹の安定

です。

注意点は、できない子を責めないことです。最初は壁や親の手につかまっても大丈夫です。

「昨日より少し長く立てたね」と、その子の成長を見てあげることが大切です。

運動が苦手な子への関わり方

運動が苦手な子に一番避けたいのは、他の子と比べることです。

「なんでできないの?」
「みんなできてるよ」
「もっと頑張って」

こうした声かけは、子どもにとってプレッシャーになりやすく、運動嫌いにつながることがあります。

運動が苦手な子には、次のような関わりがおすすめです。

1. 勝ち負けより「できた」を見る

運動遊びでは、勝ったか負けたかより、前よりできた部分を見ることが大切です。

たとえば、

「前より腕が大きく振れたね」
「ジャンプの着地が上手だったね」
「ボールをよく見ていたね」

このように、動きの一部を認める声かけが有効です。

2. 難易度を下げる

運動が苦手な子には、簡単すぎるくらいから始めてよいです。

投げる遊びなら、近い距離から。
ジャンプなら、低い段差から。
片足立ちなら、手をつないで。

成功体験を積むことで、「やってみよう」という気持ちが生まれます。

3. 練習ではなく遊びにする

幼児期の運動は、トレーニングより遊びとして取り入れる方が続きます

「10回やりなさい」よりも、
「忍者みたいに渡ってみよう」
「カエルになってジャンプしてみよう」
「怪獣から逃げよう」
といった遊びの設定にすると、子どもは自然に体を動かしやすくなります。

姿勢や体の硬さも見ておきたい

子どもの体づくりでは、運動能力だけでなく、姿勢や体の動きやすさも大切です。

家庭で見やすいポイントは次の4つです。

  • 片足で数秒立てるか
  • しゃがみ込みができるか
  • 腕がまっすぐ上がるか
  • 前屈で体が極端に硬すぎないか

これらがうまくできないからといって、すぐに問題というわけではありません。子どもには個人差があります。

ただ、片足立ちが極端に苦手、しゃがめない、腕が上がりにくい、よく転ぶ、痛みを訴えるなどが続く場合は、家庭で抱え込みすぎず、必要に応じて専門家に相談することも大切です。

家庭では、注意して姿勢を直すよりも、肩甲骨や股関節を大きく動かす遊びを取り入れるとよいです。

たとえば、

  • バンザイ遊び
  • 壁タッチ
  • しゃがんで拾う遊び
  • カエルジャンプ
  • 雑巾がけ
  • クマ歩き

などです。

姿勢は「背筋を伸ばしなさい」だけでは変わりません。体を支える経験動かす経験遊びの中で姿勢を保つ経験が大切です。

年齢別の目安

3歳ごろ

この時期は、上手にできるかよりも、体を動かすことを楽しむ時期です。

走る跳ぶ転がる登るくぐる投げるなど、いろいろな動きを遊びの中で経験できれば十分です。

親は「フォーム」を教えすぎず、一緒に楽しむことを優先しましょう。

4〜5歳ごろ

少しずつ体の使い方がまとまってきます。

ジャンプ、片足立ち、ボール投げ、鬼ごっこ、動物歩きなどを取り入れると、バランス、支える力、投げる力を経験できます。

この時期は、子どもによって得意・不得意の差が見えやすくなりますが、比べすぎないことが大切です。

小学生低学年

小学生になると、体育やスポーツで得意・不得意を自覚しやすくなります。

運動が苦手な子には、記録を伸ばすことよりも、動き方をわかりやすくすること、成功体験を作ることが大切です。

走る、跳ぶ、投げるだけでなく、リズム、反応、バランス、方向転換など、いろいろな動きを遊びにして経験しましょう。

やりすぎには注意

子どもの体づくりで大切なのは、無理に鍛えることではありません。

特に幼児期は、長時間同じ練習をしたり、嫌がるのに無理やり続けたりする必要はありません。

注意したいポイントは、

  • 痛みがあるときは中止する
  • 嫌がるときは無理にやらせない
  • 他の子と比べない
  • 勝ち負けだけにしない
  • 同じ動きばかりに偏らない
  • 暑さや転倒に注意する

ことです。

運動は、子どもにとって楽しい経験であることが大切です。

「できないことを直す時間」ではなく、「体を動かすって楽しい」と感じる時間にしていきましょう。

まとめ

子どもの運動能力を伸ばすために大切なのは、早く専門スポーツを始めることや、厳しい練習をすることではありません。

幼児期から小学生にかけては、遊びの中で多様な動きを経験することが、体づくりの土台になります。

家庭で意識したいポイントは次の5つです。

  • 記録だけでなく動き方を見る
  • 走る・跳ぶ・投げる・支えるなど多様な動きを経験する
  • 特別な道具より、身近な物で楽しく遊ぶ
  • 運動が苦手な子には成功体験を増やす
  • 姿勢や体の硬さも、遊びの中で整える

完璧にやる必要はありません。

新聞紙を丸めて投げる。
ロープを床に置いて跳ぶ。
親子で鬼ごっこをする。
片足立ちで笑い合う。

そんな小さな遊びの積み重ねが、子どもの体づくりにつながります。

大切なのは、親が頑張りすぎることではなく、親子で楽しく続けられる形を見つけることです。

参考文献・参考資料

  • 文部科学省.幼児期運動指針ガイドブック.2012.
  • 公益財団法人日本スポーツ協会.アクティブ・チャイルド・プログラム(JSPO-ACP)ガイドブック.第3版.2023.
  • 公益財団法人日本スポーツ協会,日本スポーツ少年団.幼児期からのアクティブ・チャイルド・プログラム.2018.
  • 厚東芳樹,桒田七奈美.幼児の体力・運動能力に関する現状と課題.人間生活文化研究.2020;30:825-835.
  • 小林育斗.幼児における投動作の学習に関する研究.作新学院大学紀要.2021;12:133-142.
  • 林承弘.姿勢と子どもロコモ−ロコモ・フレイル予防に向けて−.小児歯科臨床.2024;29(10):21-29.
  • 運動遊びBOOK.スポーツ庁委託事業 子供の運動習慣アップ支援事業.
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