運動が苦手な子に親ができる声かけ|やる気を失わせない関わり方

関わり方

はじめに

「うちの子、運動が苦手みたい」
「体育や運動遊びになると、すぐに嫌がる
「つい“もっと頑張って”と言ってしまうけれど、これでいいのかな?」

子どもの運動を見ていると、親として心配になる場面があります。

走るのが遅い、ボールがうまく投げられない、縄跳びが続かない、友達と比べて動きがぎこちない。そんな姿を見ると、つい「ちゃんとやって」「なんでできないの?」と言いたくなることもあるかもしれません。

でも、運動が苦手な子ほど、親の声かけによって「やってみよう」と思えることもあれば、反対に「もうやりたくない」と感じてしまうこともあります。

結論:比べるより「昨日よりできたこと」を見つける

先に結論から言うと、運動が苦手な子への声かけで大切なのは、他の子と比べるのではなく、その子自身の小さな変化を見つけて伝えることです。

「前より足が上がっていたね」
「さっきよりボールをよく見ていたね」
「最後までやってみたのがよかったね」

このように、結果だけでなく、過程や工夫、少しの進歩を言葉にすることで、子どもは「自分も少しずつできるかもしれない」と感じやすくなります。

小学校体育の研究でも、教師が個人の進歩」を強調した肯定的な言葉かけを行うことで、児童の体育に対する満足感、肯定的態度運動有能感などが高まる可能性が示されています[1]。

また、運動有能感が低い子どもは、体育への苦手意識を感じやすいことも報告されています[2]。

つまり、運動が苦手な子には「能力を評価する声かけ」よりも、「進歩を一緒に見つける声かけ」が大切です。

文献からわかること

運動が苦手な子どもは、単に体の動かし方だけで困っているとは限りません。

小学生を対象にした研究では、体育への苦手意識には「避けたい気持ち」「人と比べてしまう気持ち」「劣等感」「嫌だと感じる気持ち」などが関わるとされています[2]。

また、運動有能感は「自分は運動ができる」という感覚だけでなく、「練習すればできるようになる」という感覚や、「先生や友達に受け入れられている」という感覚も含むとされています[2]。

さらに、体育授業に関する研究では、教師の行動として「ほめる」「わかりやすく教える」「いろいろ試させる」「気持ちをわかってくれる」「励ます」といった関わりが、子どもの動機づけに関係することが示されています[3]。

幼児を対象にした研究でも、保育者が子どもの興味や気持ちを見ながら、具体的でわかりやすくほめることが、運動への内発的な動機づけに関わる可能性が示されています[4]。

ただし、これらは「声かけだけで運動能力が必ず上がる」という意味ではありません。大切なのは、子どもが安心して挑戦できる環境をつくり、運動に向かう気持ちを支えることです。

理学療法士パパとしての経験

ここからは、文献ではなく私自身の経験です。

運動教室や子どもとの関わりの中で感じていたのは、運動が苦手な子ほど、失敗そのものよりも「見られること」「比べられること」「できないと言われること」に敏感な場合があるということです。

例えば、ボールを投げるのが苦手な子に「もっと強く投げて」と言うだけでは、体の使い方は変わりにくいことがあります。でも、「今のはボールをよく見ていたね」「腕を前に出そうとしていたね」と具体的に伝えると、次の一回に向かいやすくなることがあります。

また、家庭では、運動を“練習”にしすぎないことも大切だと感じます。親子で追いかけっこをする、布団の上で転がる、ボールを転がして遊ぶなど、遊びの中で体を動かす方が、子どもは自然に挑戦しやすいです。

家庭でできる声かけの具体策

1. 「できた・できない」より「変化」を伝える

「できたね」だけでなく、少し前との違いを言葉にします。

例:
「さっきより遠くに投げられたね」
「前よりジャンプの時に膝が曲がっていたね」
「最後までやってみたね」

子どもは、自分では小さな変化に気づきにくいことがあります。親が変化を見つけて伝えることで、「練習すると変わるんだ」と感じやすくなります。

2. 他の子ではなく「その子の前回」と比べる

「お友達はできているよ」は、運動が苦手な子にはプレッシャーになりやすい言葉です。

代わりに、
「昨日よりスムーズだったね」
「前より怖がらずにできたね」
「今日は1回やってみたのがすごいね」

と、その子自身の中で比べるようにします。

3. 結果ではなく「見ていたポイント」をほめる

運動では、結果だけを見ると「勝った・負けた」「できた・失敗した」になりがちです。

でも、親が見るポイントを変えると、声かけも変わります。

例:
「ボールをよく見ていたね」
「転んでもすぐ起きたね」
「順番を待てたね」
「怖かったけど一歩進めたね」

これなら、運動が得意でない子にも伝えられることが増えます。

4. 「どうしたらできそう?」と一緒に考える

親がすぐに正解を教えるより、子どもと一緒に考える声かけも有効です。

「次はどうしたら届きそう?」
「どこを見たら投げやすいかな?」
「もう少し簡単にするならどうする?」

このような声かけは、子どもが自分で工夫するきっかけになります。うまくいかない時も、「失敗=終わり」ではなく、「試している途中」と考えやすくなります。

5. 嫌がる日は“見るだけ・触るだけ”でもOKにする

運動が苦手な子にとって、毎回全力で参加するのは負担になることがあります。

そんな時は、
「今日は見るだけでもいいよ」
「ボールを触るだけでもいいよ」
「1回だけやって終わりにしようか」

と、参加のハードルを下げることも大切です。

小さく関わる経験を積み重ねることで、「やっても大丈夫」という安心感につながります。

注意点

まず、無理にやらせすぎないことです。親がよかれと思って練習量を増やしても、子どもが「運動=怒られる時間」と感じると、かえって避けたくなることがあります。

また、「なんでできないの?」「下手だね」「もっと真面目にやって」などの言葉は、子どものやる気を下げる可能性があります。もちろん、危ないことをした時に止める声かけは必要ですが、能力そのものを否定する言い方は避けたいところです。

そして、極端に疲れやすい、転倒が多い、痛みを訴える、日常生活にも困りごとがある場合は、家庭だけで判断せず、小児科や専門職に相談することも選択肢になります。この記事は診断や治療を目的としたものではなく、家庭でできる関わり方の工夫として読んでください。

まとめ

運動が苦手な子に必要なのは、強い言葉で頑張らせることではありません。

大切なのは、

  • 他の子と比べない
  • 小さな進歩を見つける
  • 結果より過程を見る
  • 安心して挑戦できる雰囲気をつくる
  • 嫌がる日はハードルを下げる

という関わりです。

運動が得意になることだけがゴールではありません。子どもが「体を動かすのって、ちょっと楽しいかも」と感じられることが、将来の運動習慣の土台になります。

完璧な声かけをしようとしなくても大丈夫です。まずは今日、子どもの運動を見た時に「前よりできているところを一つ見つけて、言葉にしてみてください

参考文献・参考資料

[1] 長谷川悦示「小学校体育授業における『個人の進歩』を強調した教師の言葉かけが児童の動機づけに及ぼす効果」スポーツ教育学研究, 2004.

[2] 上家卓ほか「小学生における体育授業への苦手意識に関する研究:運動有能感に着目して」北海道教育大学紀要, 2014.

[3] 伊藤豊彦「体育学習における教師行動が児童の動機づけに及ぼす効果に関する研究―自己決定理論からの分析―」体育科教育学研究, 2017.

[4] 杉本信・森司朗「保育者のほめ言葉が幼児の運動に対する内発的動機づけに影響するプロセス―関係性欲求に着目して―」帝京科学大学教育・教職研究, 2022.

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